☆☆☆

「グラスハートが割れないように」小川一水

ニセ科学的なものを元ネタに、二人の恋人の成長物語なんですが、作者が言いたいことは、それよりもニセ科学的なものを巡る社会の動きとその収束を描きたかったのではないかとおもう。

「7C」"7C" ジェイソン・ロバーツ"Jason Robarts"/府川由美恵 訳

脅迫性障害の現れ方を天文学を、ネタに描く事で幻想的なミステリに仕上がっている。でも私には難解。

「逃げ場なし」 No Refuge Could Save アイザック・アシモフ

『ユニオン・クラブ綺談』アイザック・アシモフ 創元推理文庫 所収 短い小説ながら、しっかりとしたパターンで作られたシリーズになっていると思う。この話はアメリカ国民でないと面白さ半減であろうが悪くない。

「死刑囚監房」Peter Fereney's Death Cell

W・P・マッギヴァーン W. P. McGivern 『世界ショートショート傑作選1』 編:各務三郎 講談社文庫 所収 面白いのだが、シニカルすぎる。素直すぎてシニカルって。

「チェックメイト」Checkmate

サミュエル・W・テーラー Samuel W. Taylor 『世界ショートショート傑作選1』 編:各務三郎 講談社文庫 所収 短くても文学的な作品だと思う。意外な結末や、恐怖だけがショートショートでない好例。

「とんだ災難」I Never Felt Better ジェームズ・M・アルマン James M. Ullman

『世界ショートショート傑作選1』 編:各務三郎 講談社文庫 所収 ジョン・コリアの短篇に似たような作品があったような。そちらの方がうまかったかな。

「五人目の客」Fifth Head G・G・フィックリング G. G. Fickling

『世界ショートショート傑作選1』 編:各務三郎 講談社文庫 所収 タイトルが引っかけになってる。

「失礼、番号ちがい -ではありません」Sorry, Right Number チャールズ・アインスタイン Charles Einstein

『世界ショートショート傑作選1』 編:各務三郎 講談社文庫 所収 古い電話のシステムを使った小品。悪くはない。

「走れ、ウィリー」Run, Willie Run ヘンリー・スレッサー Henry Slesar

『世界ショートショート傑作選1』 編:各務三郎 講談社文庫 所収 各務三郎が解説で引用している、リチャード・バーブライトによるシュートショートの定義。「…物語のなかに閃光の人生をかいまみせながら…」というのを代表する作品ではある。

「殺人者」The Killers アーネスト・ヘミングウェイ

『世界短編傑作集4』編:江戸川乱歩 創元推理文庫 所収 ここからハードボイルドの文体が始まったと言うのと、殺し屋のプロトタイプが生まれたと言う歴史的価値云々を知っていないと、少し面白みに欠けるが、殺し屋とのやり取りや、静かに自分の運命を受け入…

「完全犯罪」The Perfect Crime ベン・レイ・レドマン

『世界短編傑作集3』編:江戸川乱歩 創元推理文庫 所収 動機が自尊心を守るためと言う点が、極めて凶悪なのではないかと思わせる。これも探偵物のセルフパロディのような物?

「夜鴬荘」Philomel Cottage アガサ・クリスティー

『世界短編傑作集3』編:江戸川乱歩 創元推理文庫 所収 何となくアンフェアな感じがしなくもない。

「茶の葉」The Tea Leaf エドガー・ジェプスン & ロバート・ユーステス

『世界短編傑作集3』編:江戸川乱歩 創元推理文庫 所収 これも小学生のころに、読んだ推理クイズの本に載ってた。話しとしては面白いのだけど、尖ったドライアイスを胸に差し込むには無理がありすぎる。それにドライアイスをポットに入れてたら、中で気化し…

「ズームドルフ事件」 The Doomdorf Mysteryメルヴィル・D・ポースト

『世界短編傑作集2』編:江戸川乱歩 創元推理文庫 所収 トリックがどうのと言うより、開拓時代のアメリカっぽさと、キリスト教的な考え方や、土俗的な考え方が色濃く作品無いに流れていて雰囲気を作っていていい。

「十三号独房の問題」 The Problem of Cell 13 ジャック・フットレル

『世界短編傑作集1』編:江戸川乱歩 創元推理文庫 所収 これも小学校のころから名前だけは知っているが読んだことの無かった、「思考機械」と言われる人物の探偵物。なかなかお見事な脱出劇ではあるが、「どんな状況でも脱出出来る」というわりには、いささ…

「医師とその妻と時計」 The Doctor, His Wife, and the Clock アンナ・カサリン・グリーン

『世界短編傑作集1』編:江戸川乱歩 創元推理文庫 所収 盲目の医師と美しい妻の悲しい愛の物語なのですが、何せ無駄に長い感じがしてしまう。

「笑う肉屋」 The Laughing Butcher フレドリック・ブラウン

『まっ白な嘘』フレドリック・ブラウン 創元推理文庫 所収 トリック云々ではなく、不気味な肉屋の存在感とそれを取り巻く雰囲気の作り方がすばらしい。リンチというアメリカの暗部を扱った邪悪な話しと言う感じもするが。

「父さんもどき」"The Father-Thing" フィリップ・K・ディック 大森望:訳

ボディースナッチャーVS.子供。アメリカの赤狩り時代の狂想。

「初めの終わり」"The End of the Beginning" レイ・ブラッドベリ 中村融:訳

ブラッドベリのライトサイドを恥ずかしげもなく出した作品。しみじみといい。

「今年の生贄」"Victims of the Year" ロバート・F・ヤング Robert F. Young

ロバート・F・ヤングは好きな作家。西洋的な現代の寓話ってところかな。

「昨夜の魔女」"Yesterday's Witch" ゲイアン・ウィルソン Gahan Wilson

子供時代に戻って恐さを味わえた感じ。この作品が一番ハロウィンらしい小品かもしれない。

「万霊節前夜」"All Souls" イーディス・ウォートン Edith Wharton

古典的な怪奇小説。最後に突然、記述者の推測が入って終わるが、それも古典的でよい。 ただ、全36ページ中、29ページまで記述者である「私」が女性であることに気がつかなかった。なのでずっと男だと思っていた。これは気づかない私がバカなのか、作者がヘタ…

「パンプキン・ヘッド」"Pumpkin Head" アル・サラントニオ

極めてありがちなパターンの話しではあるが、ムクムクと少女の顔が変形していく場面はかなりホラーで良い。

「いまわしい異種交配」"Unholy Hybrid" ウイリアム・バンキアー

ありがちな話しではあるが、書き方がうまい。

「消されし時を求めて」"The Search" A・E・ヴァン・ヴォート

訳:伊藤典夫 『宇宙船ビーグル号』や『非Aの世界』で有名なA・E・ヴァン・ヴォート(A・E・ヴァン・ヴォクト)の作品は初めて読みます。奇想で知られる作家なので期待して読んだ。 なるほど単なる時間SFでは終わらず、「蓋然世界」とか「不死宮」とか、そ…

「鎮魂歌」"Requiem" ロバート・A・ハインライン

訳:白石朗 月へ行くことを少年時代から夢見ていた一人の老富豪の話し。まあまでした。

「AL76号失踪す」"Robot AL-76 Goes Astray" アイザック・アシモフ

訳:小尾芙佐 アシモフのロボットもの(陽電子ロボットシリーズ)です。 ロボットって何故か愛らしい存在として描かれることが多い気がする。これもそんな感じ。 削岩機で消去された山の後の状況が想像できなかったけど、まあまあ面白かったです。

「時の矢」"Time's Arrow" アーサー・C・クラーク

訳:酒井昭伸 今読むと途中でオチが見えてきてしまうけど、これが60年近く前に書かれていたと思うと面白い。 現在進行形の時間と過去の時間が遭遇するかのような展開が巧い。